軍事衛星の保有国ランキング・各国の保有数を一覧で徹底比較
この記事のポイント
軍事衛星の保有国ランキングは2023年時点でアメリカが約247基と最多、中国約157基、ロシア約110基と続く。4位以下はフランスやイスラエルなどで数が大きく減り、保有数は推計値のため実際の能力や小型衛星群の普及とあわせて読み解く必要がある。
「軍事衛星の保有国ランキングを知りたいけれど、どの国が何基持っていて、日本はどの位置にいるのか、そもそも正確な数はわかるのかがよくわかりません」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 軍事衛星の保有国ランキングと各国の保有数
- 上位のアメリカ・中国・ロシアの動向
- 保有数を読み解くうえで注意したい視点
軍事衛星の保有国ランキングは、アメリカが首位で、中国とロシアが続く構図です。
この記事を読むことで、各国の保有数の目安と、その数字をどう読み解けばよいのかを整理して理解できます。まずはランキングの全体像から見ていきましょう。
軍事衛星の保有国ランキング
基本的な仕組みや軌道を整理した軍事衛星の解説を踏まえ、その保有国ランキングを見ると、アメリカ、中国、ロシアの上位3か国が突出しています。この3か国だけで世界の軍事衛星の多くを占め、その他の国は大きく数を離される構図です。まずはランキングの根拠と全体像を確認します。
ランキングの根拠となるデータ
軍事衛星の保有数は、公的な統計として一元的に公表されていません。そのため、ミサイル発射を探知する早期警戒衛星の解説などで示される各機能の配分も含め、各種の集計は軌道上の衛星を追跡する民間データベースや、各国政府の資料をもとにした推計が用いられます。
代表的な情報源が、アメリカの非営利団体、憂慮する科学者同盟(UCS)が公開してきた衛星データベースです。世界の運用衛星を国別や用途別に分類しており、軍事目的の衛星の集計にも使われています。日本では、防衛省の防衛白書が各国の宇宙利用の動向をまとめています。数値の前提となる年次や定義によって順位や基数は変わるため、出典の確認が欠かせません。
保有数の上位国一覧
各国の宇宙安全保障体制の規模を測る指標として、軍事衛星の保有数を国別に並べると次のようになります。日本が近年防衛省 早期警戒衛星の解説で検討しているような最新の宇宙アセット整備も、こうした世界的な配備動向と深く結びついています。以下はUCSの衛星データベースをもとにした2023年時点の推計値です。
| 順位 | 国 | 軍事衛星の推計数 |
|---|---|---|
| 1 | アメリカ | 約247基 |
| 2 | 中国 | 約157基 |
| 3 | ロシア | 約110基 |
| 4 | フランス | 約17基 |
| 5 | イスラエル | 約12基 |
| 6 | イタリア | 約10基 |
| 7 | インド | 約9基 |
| 8 | ドイツ | 約8基 |
| 9 | イギリス | 約6基 |
| 10 | スペイン | 約4基 |
上位3か国と4位以下の差が非常に大きい点が特徴です。4位のフランス以下はいずれも20基に届かず、宇宙の安全保障利用が一部の国に集中している様子がうかがえます。
なお、日本の防衛省が示した2020年時点の資料では、軍事衛星を100基以上運用する国は米中ロの3か国で、アメリカが約128基、中国が約109基、ロシアが約106基とされていました。集計時点や定義の違いで数字は動きますが、上位3か国という顔ぶれは共通します。
保有数が公表されにくい理由
軍事衛星の正確な保有数は、各国とも公表を控えています。一般的な偵察衛星の解説でも言及されるように、解像度や軌道の詳細などは軍事機密にあたり、能力を隠すために情報が明かされないためです。
日本の情報収集衛星も、軌道の要素などは公開されていません。そのため、ランキングに並ぶ数字はあくまで外部からの追跡や公開情報にもとづく推計です。実際の運用数は、これより多い可能性も少ない可能性もある点に留意が必要です。
保有数で上位の3か国
自前での整備を進める偵察衛星 日本の解説とも関連しますが、世界の軍事衛星の保有国ランキングで上位を占めるのは、アメリカ、中国、ロシアの3か国です。いずれも100基を超える規模で、宇宙を安全保障の基盤として重視してきました。ここでは、それぞれの現状と最近の動きを見ていきます。
世界最多を誇るアメリカ
軍事衛星の保有数で世界最多はアメリカです。撮影性能の極限を追求する偵察衛星 解像度の解説にもある通り、その能力は他国を圧倒しており、2023年時点で約247基とされ、2位以下を大きく引き離しています。
アメリカは2019年に宇宙軍を創設し、偵察、通信、測位、早期警戒といった幅広い任務を衛星で支えています。近年は少数の大型衛星に頼る形から、多数の小型衛星を連携させる衛星コンステレーションへの移行を進めています。ミサイルの追尾や途切れない通信を目的に、低軌道へ多数の衛星を配備する計画が動いています。
急速に増やす中国
保有数で2位につけるのが中国です。高高度から常に監視を行う偵察衛星 静止軌道の解説などの用途別衛星も含め、2023年時点で約157基とされ、その伸びの速さが際立ちます。
中国の軍事衛星は、2012年からの9年間で約3倍に増えたと防衛省の資料で指摘されています。地球観測を担う遥感衛星、独自の測位システムの北斗、通信衛星などを幅広く整備してきました。宇宙戦力の急速な増強は、アメリカ宇宙軍が最大級の懸念として名指しするほどで、日本を含む周辺国が警戒を強めています。
宇宙開発を続けるロシア
3位のロシアは、2023年時点で約110基の軍事衛星を運用しています。旧ソ連時代からの長い宇宙開発の歴史を持つ宇宙大国です。
ロシアは偵察衛星や早期警戒衛星を運用してきましたが、一部で更新の遅れも指摘されています。静止軌道の早期警戒衛星を失った時期があるとされ、監視網の維持が課題との見方もあります。それでも上位3か国の一角として、宇宙の安全保障で重要な位置を占め続けています。
上位3か国に続く主な保有国
上位3か国のあとには、独自の偵察衛星や測位衛星を持つ国々が続きます。数は少ないものの、いずれも高い技術で安全保障に活用しています。ここではランキング上位に並ぶ主な国と、日本の状況を見ていきます。
フランスとイタリア
ヨーロッパで軍事衛星の保有が目立つのがフランスとイタリアです。フランスは約17基でランキング4位につけ、ヨーロッパで最も多くの軍事衛星を持ちます。
フランスは、光学偵察衛星のヘリオス2や、電子情報を集めるCERESなどを運用しています。イタリアは約10基で、軍民両用のレーダー衛星COSMO-SkyMedが代表例です。全天候で地表を観測できるレーダー衛星を軸に、防災と安全保障の両面で活用しています。
イスラエルとインド
中東とアジアでも、独自の軍事衛星を持つ国があります。イスラエルは約12基でランキング5位、周辺国の監視のためにオフェク偵察衛星を運用しています。
インドは約9基で、宇宙開発の進展とともに軍事利用も広げてきました。偵察や通信の衛星を整備し、地域の安全保障で存在感を増しています。両国とも保有数は上位3か国に及びませんが、自前で衛星を打ち上げられる技術力を備えています。
日本の軍事衛星の保有状況
日本は、軍事目的の衛星として情報収集衛星とXバンド防衛通信衛星を運用しています。情報収集衛星は内閣衛星情報センターが管理し、安全保障と大規模災害への対応に使われています。
政府は、光学衛星4基、レーダー衛星4基、データ中継衛星2基を合わせた10機体制を目指して整備を進めています。通信面では、自衛隊専用のXバンド防衛通信衛星きらめきが部隊間の安全な通信を支えています。世界のランキングでは上位3か国から離されるものの、日本も着実に宇宙の安全保障利用を広げています。
軍事衛星の保有数ランキングを読み解く視点
保有数のランキングは各国の宇宙戦力を示す目安ですが、数字だけで実力を測れるわけではありません。基数の背景にある技術や運用、増加の傾向まで見ることが大切です。ここでは、ランキングを読み解くための視点を整理します。
保有数と実際の能力は必ずしも一致しない
軍事衛星の保有数が多いほど能力が高いとは限りません。1基あたりの性能や、衛星をどう組み合わせて運用するかによって、実際の力は大きく変わるためです。
高解像度の偵察衛星を少数運用する国と、性能を抑えた衛星を多数並べる国では、同じ基数でも意味が異なります。地上の運用体制や、妨害への強さも能力を左右します。ランキングの数字は全体像をつかむ入り口として捉え、中身まで見ることが欠かせません。
小型衛星群による保有数の増加
近年、保有数を押し上げているのが小型衛星群です。多数の小型衛星を低い軌道で連携させることで、地球上をすき間なく監視できます。
アメリカは、量産型の小型衛星を数百機規模で配備する計画を進めています。中国も、通信衛星のコンステレーション計画を本格化させています。1基あたりが安価で、一部が失われても機能を保てる強みがあり、今後は保有数のランキング自体が大きく塗り替わる可能性があります。
今後の各国の動向
軍事衛星の保有数は、今後さらに増える見通しです。地政学的な緊張の高まりを背景に、各国が宇宙への投資を強めているためです。以下は現時点で公表されている計画にもとづく見通しであり、確定した数字ではありません。
主要国の主な方向性は次のとおりです。
- アメリカ:小型衛星群でミサイル追尾や通信の網を厚くする
- 中国:観測と通信の衛星を急ピッチで増やす
- 日本:情報収集衛星の10機体制と小型衛星の活用を進める
こうした動きにより、上位3か国と他国の差や、ランキングの並び自体が今後変化していくとみられます。
まとめ:軍事衛星の保有国ランキングは米国が首位で中露が続く
ここまで、軍事衛星の保有国ランキングと各国の保有数、上位3か国の動向、そして数字の読み解き方までを見てきました。軍事衛星の保有国ランキングは、アメリカが首位で、中国とロシアが続く構図です。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 保有数の上位はアメリカ・中国・ロシアの3か国
- 4位以下はフランスやイスラエルなどで数は大きく減る
- 保有数は推計であり実際の能力とは別に見る必要がある
この記事を通じて、各国の軍事衛星の保有数の目安と、その数字をどう捉えればよいのかを整理して理解できたはずです。小型衛星群の普及で、今後はランキングの姿も変わっていきます。
宇宙防衛や軍事衛星の最新動向についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。関連する資料もご用意していますので、あわせてご活用ください。
軍事衛星 保有国 ランキングに関するよくある質問
参考文献
この記事を引用する
執筆者
編集部
「宇宙ビジネスを、ビジネスとして読む。」をコンセプトに、国内外の宇宙産業(衛星・ロケット・宇宙データ・月面開発等)の動向を追う専門記者・アナリスト集団。AI時代に信頼される一次情報源を目指し、ファクトとデータに基づく客観的な分析・解説を日々お届けします。
監修者
リサーチチーム
専門アナリストらと提携し、データ収集・分析を行うSpace Withの専門調査部門。国内外の宇宙政策、政府予算、資金調達動向、技術トレンドの定量的な分析とファクトチェックを行い、本メディアが配信する情報の信頼性と客観性を担保します。
関連記事
静止軌道の偵察衛星とは?低軌道との違いや種類をやさしく解説
静止軌道の偵察衛星とは何かを、低軌道との違いから解説。早期警戒やSIGINTなど種類ごとの役割、常時監視の利点や分解能の課題、動向まで紹介します。
宇宙へのサイバー攻撃とは?衛星をねらう手口と被害事例を解説
宇宙へのサイバー攻撃とは何かを、衛星通信の傍受やジャミングなどの手口、Viasatへの攻撃などの被害事例、国内外の対策までわかりやすく解説します。
防衛省の宇宙状況監視とは?脅威と日本の体制をやさしく解説
防衛省の宇宙状況監視とは何かを、衛星をねらうデブリや電波妨害などの脅威、宇宙作戦団やレーダーによる日本の体制、米国との連携まで解説します。
宇宙領域防衛指針とは?防衛省が示す宇宙防衛の要点を徹底解説
宇宙領域防衛指針とは何かを、防衛省が公表した目的や背景、防衛力強化の四つの柱、航空宇宙自衛隊への改称や民間連携までわかりやすく解説します。
偵察衛星とは?種類や解像度・各国と日本の情報収集衛星を解説
偵察衛星とは何かを、光学やレーダーなど種類ごとの仕組みから解説。解像度や軌道の違い、米中露の動向、日本の情報収集衛星までやさしく紹介します。
早期警戒衛星とは?ミサイル探知の仕組みと日本の動向を解説
早期警戒衛星とは、弾道ミサイルの発射を赤外線で探知する軍事衛星です。探知の仕組みや静止軌道、米国のSBIRS、日本の取り組みまでを解説します。