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火星に水はあるのか?現状・消えた理由・生命の可能性を解説

宇宙探査・有人宇宙

この記事のポイント

火星の水は表面には存在しないが、地下や極地には氷や液体の水が残っている可能性が高い。水素の宇宙流出や鉱物への取り込み、砂嵐の影響で大部分が失われ、JAXAのMMX計画など今後の探査で生命との関係の解明が期待される。

火星に水はあるのか?現状・消えた理由・生命の可能性を解説

「火星に水があるかどうか気になるけれど、本当に生命が存在した可能性はあるのか、正直よくわかっていません」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 火星の水の現状と過去の証拠
  • 水が消えた理由と発見の歴史
  • 火星の水と生命の可能性

火星の水は、地下や極地には現在も残っている一方、かつて表面を流れていた大量の水は数十億年かけて失われてきました。この記事を読み進めることで、火星の水をめぐる過去から現在、そして今後の探査計画までを一通り理解できるようになります。

火星に水は存在するのか

火星に水があるかという疑問に対しては、現在も一部で水が存在していると答えられます。火星の表面には液体の水は見当たりませんが、地下や極地には氷や液体の水が残っていることが、複数の観測から明らかになっています。これらの水資源を有効に活用できれば、火星に住めるかという問いの答えにも大きく近づくはずです。ここでは現在の火星表面の状態、地下の液体の水、極地の氷という3つの観点から整理します。

現在の火星表面の状態

火星の表面は乾燥しており、液体の水は存在していません。大気が非常に薄く気圧が低いため、仮に水が表面に流れ出たとしても、すぐに蒸発するか凍結してしまいます。

火星表面の平均気温は氷点下60度前後まで下がり、水が液体のまま安定して存在できる条件が整っていません。ただし、季節や時間帯によっては塩分濃度の高い水がわずかな期間だけ形成される可能性が指摘されています。

地下に存在する液体の水

火星の地下には、現在も液体の水が存在している可能性が高いとされています。探査機インサイトが検出した地震波の伝わり方を分析した結果、地下約10キロから20キロの深さに、水を含んだ岩石の割れ目があると考えられています。

さらに別の研究では、地下約1.5キロメートルの深さに地底湖のような水がたまっている可能性も報告されています。凍結を防ぐために塩分濃度が非常に高く、過塩素酸塩を多く含む水である可能性が高いといえます。

極地に眠る氷

火星の南極と北極には、二酸化炭素の氷と水の氷が積み重なった極冠が広がっています。火星の特徴である極冠は、冬になると二酸化炭素が凍って厚さ1メートルほどの層をつくり、夏になると気体となって大気中へ抜けていき、水の氷の層があとに残ります。

以下は火星の水に関する現状の整理です。

場所状態特徴
表面液体の水はほぼ無し低温・低圧ですぐ蒸発・凍結する
地下液体の水が存在する可能性高濃度の塩分を含み凍結を免れている
極地氷として存在水の氷とドライアイスが層になっている

火星の水は表面から姿を消したものの、場所を変えて今も残り続けているといえます。

火星にかつて存在した水の証拠

火星には今より遥かに大量の水があった時代の痕跡が数多く残されています。地形の証拠、鉱物の証拠、隕石の証拠という3つの角度から、火星の水の歴史を裏づける材料を確認していきます。

河川や海の痕跡地形

火星の地表には、川が湖に流れ込む場所にできるデルタ地形が複数見つかっています。なかでもジェゼロクレーターの西端に残るデルタは代表的な例で、周囲から流れ込んだ水がこの地形を通じてクレーター内の湖へと運ばれていたと考えられています。

ゲールクレーターの地層からも、湖底の堆積物や小規模なデルタが積み重なった跡が確認されており、数千万年にわたって湖の形成と枯渇が繰り返されていたことがうかがえます。表面のデルタは約37億年前の水の存在を示す一方、地下で見つかった層はさらに古い約42億年前から形成が始まったとみられています。

含水鉱物の発見

火星の広い範囲で、液体の水がなければ形成されない含水粘土鉱物が発見されています。特に約30億年より古い地質体を中心に、多種類の粘土鉱物が相次いで確認されました。

マーズ・リコネッサンス・オービターは、ノクティス・ラビリントスと呼ばれる地域で含水鉱物を含む岩石を撮影しており、この場所にもかつて水が存在していたことを示しています。ヨーロッパ宇宙機関とアメリカ航空宇宙局は、これらの観測データをもとに含水鉱物の分布地図を共同で作成しました。

以下は火星の水の証拠として代表的な3つの分類です。

証拠の種類内容示唆される時代
地形デルタ・湖底堆積物約37億〜42億年前
鉱物含水粘土鉱物約30億年より古い時代
隕石ジルコン結晶約44億5000万年前

隕石が示す最古の水の記録

火星の水に関する最も古い証拠は、火星由来の隕石に含まれるジルコンという鉱物から見つかりました。このジルコン結晶は約44億5000万年前に形成されたとみられ、当時すでに温かい液体の水が存在していたことを示す痕跡が残っています。

同じ隕石には、地球ではイエローストーン国立公園の熱水噴出孔でしか見られないような結晶構造も確認されており、火星誕生からごく初期の段階で水が存在していた可能性を強く裏づけています。

火星の水はどこへ消えたのか

かつて地球の6倍から7倍ともいわれる量の水を持っていた火星ですが、その大部分は現在までに失われています。ここでは、水素として宇宙へ流出した経路、地殻の鉱物に取り込まれた経路、砂嵐が引き起こす影響という3つの観点から、水が消えた理由を整理します。

宇宙空間への水素の流出

水は太陽からの紫外線によって水素と酸素に分解されます。分解された水素のうち、軽い水素は火星の弱い重力を振り切って宇宙空間へ逃げやすく、重い水素は火星に残りやすい性質を持っています。

このプロセスが数十億年にわたって繰り返されたことで、火星の水は少しずつ宇宙へ流出していきました。火星は地球に比べて重力が小さく大気も薄いため、水素が引き止められにくい環境だったといえます。

地殻の鉱物への取り込み

宇宙への流出だけでなく、水の多くは地殻内の鉱物にも取り込まれたとみられています。研究によれば、火星が本来持っていた水のうち30%から99%が鉱物の中に閉じ込められ、残りが宇宙空間へ流れ出たと推定されています。

含水鉱物として岩石の内部に固定された水は、表面や地下の観測だけでは捉えにくく、火星の水の総量を見積もるうえで重要な要素になっています。

大規模な砂嵐による影響

火星では数年に一度、全球規模の大規模な砂嵐が発生します。砂嵐が起きると、塵が太陽光を吸収して大気の温度が上昇し、通常は氷として留まる水蒸気が大気の上層まで運ばれやすくなります。

2026年に東北大学と東京大学の研究グループが発表した成果では、局地的で短時間の「ロケットダストストーム」と呼ばれる砂嵐でも同様の水蒸気の増大が起きることが確認されました。これにより、火星の水の流出は大規模な砂嵐の時期に限らず、特定の季節を問わず起こり得ることが明らかになっています。

以下は水が消えた主な経路の整理です。

経路内容
水素の流出紫外線による分解後、軽い水素が宇宙空間へ逃げる
鉱物への取り込み含水鉱物として地殻内に固定される
砂嵐の影響水蒸気が大気上層に運ばれ流出が加速する

複数の経路が同時に働いた結果、火星は現在のような乾燥した姿へと変化していきました。

火星の水が発見されてきた歴史

火星の水に関する研究は、半世紀以上にわたって少しずつ証拠を積み重ねてきました。ここでは初期の探査機による発見、火星探査車による近年の成果、そして現在も続く地下水存在をめぐる議論を紹介します。

マリナー9号による初期の発見

火星に水が存在したことを示す最初の強力な証拠は、1971年に打ち上げられたアメリカの探査機マリナー9号によってもたらされました。マリナー9号は火星表面のおよそ85パーセントを撮影し、永久凍土の融解によって形成されたとみられる大規模な水路の跡を発見しました。

この発見は、液体の水がかつて火星表面を流れていたことを示す最初の地球物理学的な証拠となり、その後の火星探査の方向性を大きく変えるきっかけになりました。

キュリオシティとパーサヴィアランスの成果

2012年に着陸したキュリオシティは、ゲールクレーターのシャープ山にある地層で、水の波によって形成された模様を持つ岩石を発見しました。この模様は数十億年前、この場所が液体の水に覆われていたことを示す明確な証拠とされています。

2021年に着陸したパーサヴィアランスも、ジェゼロクレーター周辺で湖の堆積物やデルタ地形を詳しく調査しています。両機の観測データは、火星の地質史や生命存在の可能性を探るうえで欠かせない情報源になっています。

地下水の存在をめぐる議論

2018年、火星探査機マーズ・エクスプレスは南極の氷冠の下で明るいレーダー反射を検出し、液体の水でできた地底湖が存在すると発表されました。

しかし2021年、別の研究チームがこの解釈に疑問を投げかけました。低温に凍らせた粘土鉱物のサンプルが、火星で観測されたレーダー反射とよく似た特性を示したことから、反射の正体は水ではなく粘土鉱物ではないかという指摘です。この議論は現在も続いており、地下の液体の水については引き続き検証が重ねられています。

以下は主な発見の年表です。

時期出来事
1971年マリナー9号が水路跡を発見
2012年キュリオシティ着陸、水の痕跡を継続調査
2018年マーズ・エクスプレスが地底湖の可能性を報告
2021年地底湖の解釈に対する粘土鉱物説が浮上
2021年パーサヴィアランス着陸、デルタ地形を調査

半世紀にわたる発見と議論の積み重ねが、火星の水に対する理解を少しずつ深めてきました。

火星の水と生命の可能性

火星の水は、単なる地質学的な話題にとどまらず、生命の存在可能性という大きな問いにもつながっています。これまでNASAが発表した火星生命の痕跡に関する議論を踏まえつつ、生命に必要な条件、地球外生命探査における火星の位置づけ、そして今後の探査計画について見ていきます。

生命に必要な液体の水の条件

地球上の生命にとって、液体の水は化学反応の場として欠かせない存在です。物質の交換やエネルギーの移動を効率よく行うためには、水が液体として安定して存在できる温度と圧力の範囲が必要になります。

太陽系の中で、岩石でできた惑星の表面に液体の水が安定して存在できる領域は「ハビタブルゾーン」と呼ばれ、地球から火星の軌道付近までがこの範囲に含まれます。ハビタブルゾーンと火星の環境を比較することは、生命探査の重要な候補地とされる理由のひとつです。

地球外生命探査の候補地としての火星

火星は現在の環境こそ乾燥していますが、極限環境で生存できる微生物であれば生き延びられる可能性が指摘されています。火星や月の模擬土壌を使った実験では、過酷な条件でも成長し光合成によって酸素を生み出す微生物の存在が確認されています。

火星の岩石からは、生命活動に由来する可能性がある痕跡も見つかっていますが、確実な証拠とするためには、採取した試料を地球に持ち帰り、より高精度な分析を行う必要があります。

今後の探査計画への期待

今後の火星探査で注目されているのが、日本のJAXAが中心となって進める火星衛星探査計画MMXです。2026年度の打ち上げを予定しており、火星の衛星フォボスに着陸してサンプルを採取し、地球へ持ち帰ることを目指しています。

フォボスの表面には火星由来の物質が含まれているとみられており、採取したサンプルを分析することで、地球型惑星への水や有機物の輸送メカニズムを解明する手がかりが得られると期待されています。

以下はMMXに関する概要です。

項目内容
打ち上げ予定2026年度
探査対象火星の衛星フォボス・ダイモス
主な目的サンプル採取と水・有機物の輸送メカニズム解明
帰還予定2031年度

こうした探査計画の進展により、火星の水と生命の関係については、今後さらに解明が進んでいくと考えられます。

まとめ:火星の水は今も地下に眠っている

火星の水は、表面こそ乾燥していますが、地下や極地には現在も氷や液体の水が残っていると考えられています。かつて火星表面を流れていた大量の水は、水素として宇宙へ流出したり地殻の鉱物に取り込まれたりしながら、数十億年かけて姿を変えてきました。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 火星の地下や極地には今も水や氷が残っている
  • 水の大半は宇宙への流出や鉱物への取り込みで失われた
  • MMXなど今後の探査計画が水と生命の謎解明を後押しする

この記事を通じて、火星の水がどのように存在し、なぜ失われ、どのような歴史をたどってきたのかを一通り理解できたはずです。生命の可能性を含めた今後の探査の進展にもぜひ注目してみてください。

宇宙開発の最新動向についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。関連する資料もご用意していますので、あわせてご活用ください。

火星の水に関するよくある質問

参考文献

  1. 隕石に含まれる水素同位体に記録された火星の水の歴史 | 宇宙科学研究所
  2. 火星の地下には現在も液体の水が存在する可能性 | 広島大学
  3. 火星で起きた「季節外れ」の水消失 | 東北大学大学院理学研究科・理学部
  4. Martian Moons eXploration | JAXA

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執筆者

Space With 編集部
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監修者

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