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防衛省の宇宙分野の取り組みとは?部隊体制と最新戦略を解説

宇宙安全保障

この記事のポイント

防衛省の宇宙分野の取り組みは、宇宙を陸海空と並ぶ作戦領域と位置づける方針のもと進む。2020年発足の宇宙作戦隊は2026年に約670名の宇宙作戦団へ拡充され、宇宙領域把握を軸にSDA衛星の運用や宇宙領域防衛指針による能力強化が進んでいる。

防衛省の宇宙分野の取り組みとは?部隊体制と最新戦略を解説

「防衛省が宇宙分野でどんな取り組みを進めているのか知りたいけれど、部隊の名前や専門用語が多くて全体像がつかめません。宇宙が安全保障とどうつながるのかもよくわからないままです」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 宇宙を作戦領域とする防衛省の方針と全体像
  • 宇宙作戦隊から宇宙作戦団への部隊体制の変化
  • 宇宙領域把握や宇宙領域防衛指針による能力強化

結論から言うと、防衛省の宇宙分野の取り組みは、宇宙を防衛の作戦領域と位置づけ、専門部隊と監視能力の両面から急速に強化されています。

この記事を読むことで、防衛省の宇宙をめぐる取り組みがどのような狙いで進み、今どの段階にあるのかを整理して理解できます。まずは全体像から見ていきましょう。

防衛省の宇宙分野における取り組みの全体像

防衛省の宇宙分野における取り組みは、宇宙防衛の要として、宇宙を陸海空と並ぶ防衛の作戦領域と位置づける方針のもとで進んでいます。人工衛星による通信や測位が社会と防衛の基盤となった今、宇宙の安定利用を守る体制づくりが国の安全保障の柱になりました。ここでは全体像を3つの視点から整理します。

宇宙が防衛の作戦領域となった背景

宇宙が作戦領域として重視される理由は、自衛隊の活動が人工衛星に強く依存するようになったからです。指揮統制や情報収集、部隊間の通信、測位のいずれもが衛星なしには成り立ちません。

一方で、他国による宇宙へのサイバー攻撃GPS妨害などの電波妨害、スペースデブリの増加といった脅威も高まっています。こうした状況を受け、防衛省は従来の陸海空に宇宙・サイバー・電磁波を加えた新領域を横断的に用いる多次元統合防衛力の構築を掲げました。宇宙はその中核の一つに数えられています。

宇宙安全保障構想が示す方針

宇宙安全保障構想は、日本として初めて宇宙分野の安全保障方針をまとめた文書です。宇宙開発戦略本部が2023年6月13日に策定し、今後およそ10年で取り組む施策を示しました。

この構想は、2022年12月に改定された国家安全保障戦略を土台としています。内容は次の3つのアプローチで構成されます。

  • 安全保障のための宇宙システム利用を抜本的に拡大する
  • 宇宙空間の安全で安定した利用を確保する
  • 安全保障と宇宙産業の発展の好循環を実現する

国家防衛戦略と防衛力整備計画での位置づけ

宇宙分野の具体策は、2022年12月に決定された国家防衛戦略と防衛力整備計画に明記されています。これらの文書は、防衛省が今後の防衛力を整備するうえでの設計図にあたります。

宇宙関連では、宇宙領域把握の体制整備や宇宙作戦を担う専門部隊の拡充、航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改編などが盛り込まれました。下の表に主な位置づけをまとめます。

文書決定時期宇宙分野の主な内容
国家安全保障戦略2022年12月宇宙を安全保障の重要領域と明記
宇宙安全保障構想2023年6月今後10年の宇宙安全保障の方針
防衛力整備計画2022年12月宇宙領域把握や専門部隊の整備方針

こうした複数の計画が連動することで、防衛省の宇宙分野の取り組みは一貫した方向で進められています。

宇宙の防衛を担う自衛隊の部隊体制

宇宙の防衛を担う防衛省の宇宙部隊は、数年のうちに段階的な拡充を重ねてきました。監視対象の広がりや任務の複雑化に合わせて、部隊の規模と役割が着実に大きくなっています。ここでは部隊の発展と今後の予定を順に見ていきます。

宇宙作戦隊から宇宙作戦群への発展

自衛隊で最初の宇宙領域専門部隊は、2020年5月18日に府中基地で発足した宇宙作戦隊です。約20名で編成され、防衛大臣の直轄部隊として日本の衛星を脅かすデブリや不審な衛星の監視を担いました。

その後、体制を強化するため2022年3月17日に宇宙作戦群へと改編されました。2023年3月には第2宇宙作戦隊や宇宙システム管理隊が加わり、令和6年度末には府中基地と防府北基地を合わせて約310名の規模まで拡大しています。

宇宙作戦団への改編と規模の拡大

2026年3月23日、宇宙作戦群は宇宙作戦団へと改編されました。将補を指揮官とし、2個の宇宙作戦群を基幹とする約670名の部隊となり、従来からおよそ倍の規模に増えています。

宇宙作戦団は府中基地と防府北基地に部隊を置き、宇宙状況監視に加えて宇宙領域把握の能力構築を進めます。将来は将官を指揮官とする約880名規模の宇宙作戦集団への発展が2026年度末に予定されています。

部隊発足時期規模の目安
宇宙作戦隊2020年5月約20名
宇宙作戦群2022年3月約310名
宇宙作戦団2026年3月約670名

航空宇宙自衛隊への改称

部隊の拡充と並行して、航空自衛隊そのものの改編も進みます。改正防衛省設置法の成立により、航空自衛隊は2026年度中に航空宇宙自衛隊へと改称される見通しです。

これは1954年の自衛隊発足以来、初めての名称変更にあたります。名称に宇宙を掲げることで、諸外国の宇宙防衛軍と同様に、宇宙が防衛の中心的な領域になったことを内外に示す狙いがあります。

宇宙領域把握を軸とした防衛省の監視能力

防衛省の宇宙分野の監視能力は、宇宙領域把握を中心に強化が進んでいます。地上のレーダーや光学望遠鏡に加えて、宇宙空間からの観測を担う衛星の運用も始まろうとしています。ここでは監視能力の中身を具体的に見ていきます。

宇宙状況監視と宇宙領域把握の違い

宇宙の監視には、似た言葉として宇宙状況監視と宇宙領域把握があります。両者は目的の範囲が異なります。

宇宙状況監視は、宇宙物体の位置や軌道を把握する取り組みです。これに対し宇宙領域把握は、位置や軌道の把握に加えて、他国の衛星がどのように運用され、どのような意図や能力を持つかまで見極めることを指します。

用語略称把握する範囲
宇宙状況監視SSA宇宙物体の位置や軌道
宇宙領域把握SDA運用状況や意図、能力まで

SDA衛星の打ち上げ計画

防衛省は、宇宙空間から他の衛星を観測するSDA衛星の整備を進めています。この衛星は2026年度の打ち上げを予定しており、静止軌道帯にある宇宙物体の特性を詳しく把握する役割を担います。

地上からの観測だけでは見えにくい対象を軌道上から捉えることで、監視の死角を減らせます。あわせて、衛星までの距離を精密に測るレーザー測距装置の運用開始も2026年度に見込まれています。

地上レーダーと監視体制の整備

宇宙の監視は、地上の設備との組み合わせで成り立ちます。防衛省は低い軌道を見るレーダーと、高い軌道を見る光学望遠鏡、解析システムを一体で運用する体制を整えてきました。

2025年3月からは、主に静止軌道上の衛星とその周辺を常時監視するSSAレーダーの運用が始まっています。得られた情報は米軍や民間事業者とも共有され、宇宙の見える化を支える基盤となっています。

  • 低い軌道を見るレーダーで小さな物体まで捉える
  • 高い軌道を見る光学望遠鏡で遠方の衛星を監視する
  • 解析システムで軌道を計算し衝突の危険を予測する

宇宙領域防衛指針と国際連携の強化

宇宙分野の取り組みは、方針の明確化と国内外の連携によって加速しています。2025年に示された宇宙領域防衛指針は、防衛省が宇宙で何をめざすのかを体系立てて示しました。ここでは指針の要点と連携の広がりを解説します。

宇宙領域防衛指針が掲げる能力

宇宙領域防衛指針は、防衛省が初めて宇宙分野の防衛の考え方をまとめた文書です。2025年7月28日に、防衛省次世代情報通信戦略とともに公表されました。

指針は宇宙作戦を陸海空と並ぶ作戦領域と改めて位置づけ、強化すべき能力として次の4つを挙げています。

  1. 迅速で的確な戦況把握の能力を高める
  2. 衛星通信を確保し抗たん性を向上させる
  3. 重要な衛星の機能を守る機能保証を確立する
  4. 相手方の指揮統制や通信を妨げる対抗能力を強化する

同盟国との多国間宇宙協力

宇宙の防衛は一国だけで完結しません。防衛省は同盟国や同志国との連携を重視し、情報共有や共同訓練を通じて能力を補い合う体制づくりを進めています。

その一例が、アメリカなどが主導する多国間宇宙協力の枠組みへの参加です。防衛省は2023年12月にこの枠組みへの参加を実現し、シュリーバー演習などの多国間の取り組みにも加わっています。

民間企業との連携強化

宇宙領域防衛指針は、民間企業との連携を明確に打ち出した点でも注目されています。防衛需要が国内の宇宙産業を後押しし、産業の発展が防衛力を支える好循環をめざす考えです。

すでに小型のレーダー衛星を手がけるQPS研究所や、衛星群の構築を進めるSynspectiveなどが防衛関連の取り組みに関わっています。民間の技術を取り入れることで、防衛省は監視や通信の能力を効率よく高めようとしています。

まとめ:防衛省の宇宙分野の取り組みは部隊と能力の両面で加速している

ここまで、宇宙を作戦領域とする防衛省の方針から、宇宙作戦隊に始まる部隊体制の発展、宇宙領域把握を軸とした監視能力、そして宇宙領域防衛指針と国際連携までを見てきました。防衛省の宇宙分野の取り組みは、組織と技術の両面で着実に前進しています。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 防衛省は宇宙を陸海空と並ぶ作戦領域と位置づけている
  • 宇宙作戦隊から宇宙作戦団へ部隊が段階的に拡充された
  • 宇宙領域把握と宇宙領域防衛指針で監視と防衛の能力を強化中

この記事を通じて、防衛省の宇宙をめぐる取り組みの狙いと現在地を整理して理解できたはずです。部隊の改称や衛星の運用開始など、今後も動きが続く分野として注目に値します。

宇宙開発や宇宙安全保障の最新動向についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。関連する資料もご用意していますので、あわせてご活用ください。

防衛省の宇宙に関するよくある質問

参考文献

  1. 令和6年版防衛白書 宇宙安全保障構想と防衛省の取組(防衛省)
  2. 宇宙安全保障構想(内閣府 宇宙開発戦略推進事務局)
  3. 宇宙領域防衛指針と防衛省次世代情報通信戦略の策定について(防衛省)

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執筆者

Space With 編集部
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「宇宙ビジネスを、ビジネスとして読む。」をコンセプトに、国内外の宇宙産業(衛星・ロケット・宇宙データ・月面開発等)の動向を追う専門記者・アナリスト集団。AI時代に信頼される一次情報源を目指し、ファクトとデータに基づく客観的な分析・解説を日々お届けします。

監修者

Space With リサーチチーム
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リサーチチーム

専門アナリストらと提携し、データ収集・分析を行うSpace Withの専門調査部門。国内外の宇宙政策、政府予算、資金調達動向、技術トレンドの定量的な分析とファクトチェックを行い、本メディアが配信する情報の信頼性と客観性を担保します。

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